世界が終わるとき PN.リン
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アタシの隣にはいつもアナタがいる。
たとえ、世界が終わるとしても
それだけは、絶対に変わることのない真実。
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アタシの名前はユカ。
絶賛カレシ募集中の高校二年生♪
今からバイトなんだけど、ヤバい。遅刻しそう(><)
親友のマミと教室で話し込んでいたら楽しくて、時間が経つのも忘れてしまっていた。
猛烈ダッシュでバイト先の喫茶店に行かなきゃ。
そこの角を曲がったらもうすぐ。
ホラ。もう見えて……。
ドンッ。
「いたっ。ちょっと、どこ見て歩いてんのよ!」
アタシはぶつかって転んだ。
ぶつかって痛いし、バイトにも遅れそうだし、イライラする。
「あ? ぶつかってきたのはお前の方じゃろが。何難癖つけとるんじゃ?」
サイアク。
アタシがぶつかったのは見るからに悪そうな人達。
黒ずくめのスーツにサングラスなんて掛けてるし。
「おっ、アニキ。この子、結構可愛くないすか。ちょっとそこの路地裏で良いことしやしょうぜ」
「おお、そりゃええな。おい、お前こっち来い」
えっ、この人たち何を言ってるの?
アタシの手を力ずくで引っ張って路地裏に連れ込もうとする。
「やめなさいよ。大声で人を呼ぶわよ」
夜、マミと一緒に街に出るときとかこういう人達はよく見かけるし、どうせ何もしてこないでしょ。
「うるせえ。黙って来い!」
バチン!
アタシのほっぺたに走る衝撃。
痛いけど、それよりもビックリして声が出ない。
抵抗できずに、路地裏に連れて行かれる。
「こいつ、びびって声が出ないようですぜ」
「ふっ、好都合やな。今のうちにクスリの味を覚えさせよか」
クスリ!?
アタシをどうしようっていうの?
「こいつ、可愛いけど胸はないの。まあ、胸がないのが良いっていう物好きもおるじゃろ」
「げっへっへ。高く売れやすかね。
そうだ、アニキ。ちょっくら俺が味見しても良いですかい? 実はこういう勝気な女を屈伏させるのが好きなもんで」
「何? ……まあ、ええじゃろ。早く終わらせろよ」
「ありがとうございやす」
アタシのスカートの中に入ってくる男の手。
誰か、助けて!
その時だった。
男の顔が驚愕の表情を浮かべる。
スタッ。
一人の男の子が空から舞い降りて来る。
まるで天使のようだ。
アタシは、時間が止まったみたいに身動き一つ取れない。
空から降ってきた男の子に驚いたワケじゃない。
ただ、胸が高鳴るのを感じている。
アタシの時間は、暴漢の声で動き出す。
「てめえ、一体何者だ?」
男の子はアタシと暴漢共を交互に見る。
「お前ら、悪者だな。悪者は退治しなくちゃな」
にやりと笑みを浮かべて男の子は敵をにらみつける。
うわっ、何これ。ドラマのワンシーンみたいじゃん。
「おう、お前。ずいぶんなめた口きいてくれるのう。ちょっとお仕置きが必要やな」
男の子の言葉は暴漢共を怒らせたみたいだった。
ヤバい。アタシのことなんか放っといて早く逃げて!
「おねんねしてなっ」
暴漢共は声を上げて男の子に飛び掛かる。
アタシは目を手で覆う。
ドカッ。バキッ。
……終わったのかな。
恐る恐る見てみると、そこには衝撃の光景が広がっている。
てっきり男の子がやられていると思ってたら、気絶しているのは暴漢共の方だ。
あれ? あの男の子は?
周りを見渡すと、丁度路地裏を出ていくところに男の子はいる。
ちょっと待ってよ。まだお礼も言ってないのに。
それに、もしかしたら彼が私の……。
ううん。とにかく急いで追わなきゃ。
急いで男の子の後を追う。
意外と歩くのはゆっくりで、すぐに追いつく。
「さっきはありがとうございました」
男の子の前に回り込んでお礼を言う。
「いや、あんたを助けたんじゃない。悪者を倒しただけだ」
それだけ言うと男の子はまた歩いて行こうとする。
アタシにお礼を言われるなんて筋違いだと思っているように。
けど、アタシはもっとちゃんとお礼をしたかった。
あんなピンチを助けてくれたんだもん。
アタシの横を通り過ぎていく男の子の手には、さっきの戦いでついたみたいな傷が見える。
「ちょっと、君怪我してんじゃん。ごめんね。アタシのために。
……そうだ。包帯巻いてあげるよ。君の家はどこ?」
男の子はアタシを無視し続けたけど、アタシはずっと話しかけて、遂に男の子のアパートの前まで付いていくことに成功♪
「はあ。あんたもしつこいな。
じゃあ、包帯巻いてくれたら帰ってくれ」
「えっ、入っていいの? やったー☆」
ウキウキしながら男の子の部屋に入る。
ほとんど家具がない、殺伐とした部屋。
「ほら。早く巻いてくれ」
男の子は救急箱をアタシに渡してくる。
「……ねえ。こんな部屋に住んでて寂しくないの? 家族とかは?」
男の子は首を振る。
「いや、気づいたときにはおれは一人で暮らしていた。それからずっと一人暮らしで日本各地を転々としてるんだ」
「……何か悲しい話だね。友達とか、恋人とかはいないの?」
男の子は不思議そうに首をかしげる。
「友達? 恋人? そんなもん要らないよ。人が生きるのに他人は必要ないんだ。そうやっておれはこれまで生きてきた」
男の子は無表情を装っていたのかも知れないけど、アタシの目には寂しそうに映っている。
……部屋の中気まずい空気が流れる。
包帯はもう巻き終わっている。
「……そうだ。何で君は日本各地を回ってるの?
誰かと関わりたくなくても、どこか一か所に住めば良いじゃん」
「……さっきの男共もそうだけど、この世界には悪者が多いとおれは思うんだ。
そんで、そいつらは誰かが倒さなければ、とも。
だから、その役目をおれがやってやろうと思ったんだ。
一か所に住んでいるだけじゃ悪者みんなは退治できない。各地を回る必要があるんだ」
他人は必要ないという彼。
けど、放っておけば自分には害を加えない悪者を退治しようとするのは、誰かのためになりたい、と思っているからじゃないのか。
彼は自分でも気付かない内に、誰かを助けている。
そんな彼を、誰が助けてあげられるのか。
彼が困っているときに、誰が手を差し伸べてあげられるのか。
「――決めた」
男の子は怪訝そうにアタシを見る。
「決めたって何を?」
「君が剣で、アタシは鞘になる。
剣は鞘に入ってないと傷んじゃうよ」
「……あんた、何を言ってるんだ?」
アタシはもう心に誓った言葉を口にする。
「アタシは君の傍にずっといる。
たとえ、世界中の誰もが君の敵になっても、アタシだけは味方でいる」
だって、アタシには
アタシとアナタが
赤い糸で繋がっているのが
はっきりわかるから。
目を丸くしている男の子をそっと押し倒す。
「おっ、お前。何をする気だ?」
慌てる様子がアタシにはスゴク愛しい。
「君の心を溶かしてあげたい。
人の温かさを分けてあげたい。
だめ……かな?」
男の子はただ真っ赤になって黙っている。
抵抗すればアタシなんてすぐに払いのけることもできるはずなのに、そうはしない。
沈黙は言葉よりも雄弁だ。
「クスッ。そう言えば、アタシ達、まだお互いの名前も知らなかったね。
アタシはユカ。キミは?」
「……ヒロヤ」
「ヒロヤ。これからよろしくね♪」
そして、アタシとヒロヤは結ばれた。
繋いだこの手を、もう離さない。
『celaborate!5 新入生歓迎号』より転載
素材元:+ Little Eden +
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